昨年より月に一度行われるソムリエとワイン・エキスパートの定期試験作成を担当しております、WBSの池田ひろ美です。
今年の定期試験作成も早くも3回目を迎えました!今回から2024年の教本の内容を取り入れた試験内容となります。
皆さんのところへも新しい教本は届きましたか?
あの分厚い教本を目の前に、やるぞー!と思う方もあれば、悲鳴を上げたくなる方もあるかもしれませんね。
さて、今日は私が担当する定期試験作成について
「定期試験を作成することで見えてきたこと」などをお伝えしたいと思いますのでお付き合いください。
WBSでの定期試験作成
定期試験作成の依頼
まず、この定期試験作成のお話をいただいたのは2022年12月のこと。
その時私はソムリエ・エクセレンス三次試験に落ちたばかりで、内心はどん底でした・・・。
そして来年もエクセレンス試験を受けるか・・・というプレッシャーもありましたから、正直私で良いのか?とも思いました。
ですが、少しでもやってみたい気持ちがあれば
「ともかくやってみる!」
それが私のいいところであり悪いところ?でもあるので、えい!という気持ちでスタートしました。
当然ですが、いい加減な試験は作成できません。
やればやるほど「受験者の皆さんにとって良い試験とは?」と真剣になりましたし、また作成する側という違う視点から試験を見ることができました。
これはソムリエ・エクセレンス試験を受ける上でも、モチベーションが上がりますし、勉強になり、とても良かったと言えます。
とは言え、模擬試験を作成するのも解説するのも初めてでしたから思っていた以上にやることがあります。
初回の模擬試験は思い出しても笑えるぐらい試験の解説内容が間に合わないかも!?と前場さんを心配させ、当日ギリギリに完成!という感じでした。
泣きそうになりながら解説内容を準備した日が懐かしいです。
試験を「作る側」の気持ち
前場さんが口にする
「作成側が何を伝えたいのかを考える」「作成する側の気持ちになる」
これは本当に大事なことと私も思っています。
皆さんは実際に作成側の意図を考えたことありますか。
ソムリエ・エクセレンス試験の話になりますが、私もいつも「作成する側の気持ち」を頭においていました。
私はアナログ派なので、「私が出題側だったらこれを出す」と思ったものをひたすら単語帳の裏表どちらも問題であり解答となるように作成しました。
これは、例えば先月のボルドー、格付けシャトーの問題の様に「シャトー名」から「コミューン」だけでなく「コミューン」から「シャトー名」を問われても答えられるようにするということ。
重要な内容は問われ方が一方通行ではないということです。
これが出題する側の気持ちだと思います。
他に、私が出題する側だったら重要と思うことを一覧にしてみます。
・文章中に「唯一~、最も~、いちばん~」と書かれている箇所
・文章中に「近年では~、最近では~」と書かれている箇所
・文章中に「必ず~」と書かれている箇所
・特殊な畑、醸造方法が記載されている箇所(単一、混醸、ロゼ、甘口、泡、蒸留酒etc)
・特殊な甘口の残糖量
・特殊な土壌、気候
・名称に何かしらの由来が説明されている箇所
・前年度との改定、変更箇所
・人物名(ニューワールドですと)
・規定
・“~のみ”と記載されている箇所
・世界遺産系~
・「※」の印や、「注)」と記載のある箇所(表の外側に小さく書かれている)
・付記可能な地理的表示
などです。
教本を読むときにぜひ参考にしてみてください。
試験作成の壁
作成側の延長の話になりますが、ソムリエ、ワイン・エキスパートの定期試験を作成する際に私はとある壁にぶつかりました。
これは作成側の事情として捉えてください。
私がぶつかった壁は
「4つの選択肢を作らなくてはならない」ということでした。
正解以外に3つの選択肢を作る。しかも単なる選択肢ではなく関連性があるものや、似たような選択肢などです。
これは少々難しいなと感じました。良問にするために問題だけでなく良い選択肢も考えるのです。
そのために教本を隅々チェックします。
ということは、選択肢を作りにくい問題は避けます。
例えばわかりやすいところで、A.O.C.の名称に答えが入っているもの
Muscat du Cap Corseのブドウ品種は?(答え:Muscat)
といった問題や、
いくら2022年と最新の変更とは言え
ミネルヴォワ・ラ・リヴィニエールが改称されたA.O.C.名は?
(答え:リヴィニエール)
といったものは選択肢に困り問題にできません。
他には
ボルドー地方に設立されたテーマパークの名前は?(答え:ラ・シテ・デュ・ヴァン)
これは重要なテーマパークではありますが、選択肢が非常に作りにくいので、出題するとしたらオープンした年を問題にします。
つまり本試験作成側も同じようなことを考えているのでは?と思うのです。
機械的に記憶するものが多く、難しく考えてしまうのがこの試験ですが、こんな風に作成側のことを考えながら覚えていくと少し気が楽になったりするのではないでしょうか。
今回のこれまでの話が少しでも皆さんの参考になれば嬉しく思います。
静岡市の宿場町「丸子」にあるワインショップ、wine cellar マツキヤの代表をしております。
ブルゴーニュワインを中心に日本ワイン、世界のワインを当店セラーにて揃えております。
WBSワインブックススクールのソムリエ試験のメンター・講師も務めています。